相続放棄と管理義務

文責:所長 弁護士 大澤耕平

最終更新日:2023年03月13日

1 相続放棄をしても、相続と無関係になれない?

 相続放棄の最大のメリットは、亡くなった方の負の財産を受け継がなくてもよくなることです。

 たとえば、亡くなった方が300万円の借金を背負っていた場合、相続放棄をすれば、借金の返済義務を相続しなくてもよくなります。

 「借金を相続しなくてもいい」というイメージから、「相続放棄さえすれば、相続と一切無関係になれる」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、相続放棄をしても、必ずしも相続と無関係になれるわけではありません。

 具体的には、遺産の管理義務が残ることがあります。

 ここでは、相続放棄と遺産の管理義務について、ご説明します。

2 遺産の管理義務とは何か

 たとえば、Aさんが亡くなり、Aさんの子が全員相続放棄した場合、相続権はAさんの両親に移ります。

 仮にAさんの子が遺産を預かっている場合、次の相続権を持つAさんの両親に、遺産を引き渡さなければなりません。

 遺産の引渡しをするまでは、次の相続権を持つ人のために、遺産を管理しなければなりません。

 もし、相続人全員が相続放棄をした場合、最終的には国が遺産を引き取ることになります。

 そのため、相続放棄をした相続人は、国が遺産を引き取るまでの間、遺産を管理しなければなりません。

 このように、相続放棄をしても、遺産を管理する義務は残り続けることになります。

3 遺産の管理義務を免れる方法

 遺産の管理義務は、「次の順位の相続人が、管理をするまで」負うことになります。

 そのため、次の順位の相続人に対し、財産の管理義務を託した場合、遺産の管理義務を免れることになります。

 では、最後の順位の相続人には、相続放棄した後、管理義務を免れる方法はないのでしょうか。

 相続放棄による遺産の管理義務を免れる最終手段は、相続財産管理人制度を利用することです。

 相続財産管理人は、遺産を整理し、債務の返済をしたり、残った遺産を国に引き渡す役割を負う人です。

 相続財産管理人の選任をできるのは家庭裁判所なので、家庭裁判所で手続きをすることになります。

参考リンク:裁判所・相続財産管理人の選任

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